平成29年2月 〜社会構造の変化に伴う諸問題〜
《空き家問題》
現在、我が国は社会構造上、未曾有の転換期に直面しています。将来にわたる人口減少はもはや避けることができないと言われており、少子高齢化の傾向は今後も続くでしょう。このような中、所有者が直ちに判明しない、また判明しても連絡がつかない土地・家屋の問題が浮上しています。
その一つが『空き家問題』です。戦後、住宅不足の解決は最優先課題の一つであり、急ピッチで住宅建設が進められました。しかし、昭和40年代に戦後初めて住宅数が世帯数を上回ると、以降、供給過多の状態が続き 空き家を増やす結果となりました。地方から都市への人口流出による過疎化や土地の管理放棄、相続人が登記の名義変更を行わないことなどにより今後も増加していくことが予想されます。
(平成25年現在、住宅総数6,063万戸のうち空き家数は820万戸で、上昇を続けている。)
中でも老朽化、廃屋化した空き家は、防災、防犯、衛生、景観上問題であり、地域の方々の生活に深刻な影響を及ぼしています。
また地域振興、活性化の面からも、固定資産税の徴収が困難であり、災害復旧や道路等の公共事業にも支障がでる恐れがあります。
空き家への課題
対応策としては、除却(解体)と流通・利活用の促進が考えられます。
しかし除却(解体)については、①費用負担の問題、②固定資産税の上昇(空き家であっても建物が建っていれば、特例により土地の課税標準が六分の一となるが、更地にすると特例がなくなる)、③所有者不明の空き家にどう対処すべきかなどの課題があります。
流通については、④消費者が持つ中古住宅の品質・性能への不安、⑤空き家の再生手段の整備、⑥木造住宅であればリフォームを行っていても築後20年~25年で価値がゼロと評価される慣行の解消などが課題とされてきました。
課題への対応策
このような中、国や自治体はそれぞれ独自の対策を様々な形で講じ、議論しています。例えば、登記に必要な登録免許税など諸費用の軽減や、自治体が有する空き地・空き家情報を活用し、個人情報保護に問題のない範囲内で宅建業者等へ開示することにより、不動産取引など利活用に資することなどが議論されています。
- 空き家バンク(空き家情報を登録し、利用を希望する人に物件情報を提供するシステム)の運営。
- 解体費や改修費等の補助を行う(一部市町村)。
- 国においては、平成26年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を制定し、倒壊の恐れなど問題のある空き家除却(解体)のため所有者に代わり市町村に解体等を行う権限を与え、所有者把握等のため固定資産税の情報を市町村内部で利用することを可能とする。
- 問題ある空き家の建つ土地については固定資産税特例の対象外とする。
- 相続した空き家を解体又はリフォームして売却するなど一定条件で売却した場合に譲渡所得の一部を控除する税制面での対策を行う。
- リフォームで質の向上した住宅が市場で適正に評価されるよう住宅業界・金融機関一体となった取組に支援を行う。
- 平成29年度からは空き家の所有者情報を活用するモデル的な取組を行う地方公共団体を支援するとともに、全国的な普及を図る。
- 中古住宅の品質への不安を払拭するため、平成28年に宅建業法を改正し、宅建業者に対し中古住宅の取引時に基礎・壁等の状態を調査する業者を紹介し、調査が行われた場合は、その結果を買主に説明すること等を義務付ける。
- 加えて、今開会中の通常国会に空き家を高齢者・子育て世帯の住居に活用する制度を創設する。
- 更には、空き家を取得して再生する手段として小規模な不動産事業の制度を創設するとともに、出資を円滑に進めるための環境整備の法律案が提出されました。
しかしながら、この問題の解決は決して容易ではありません。皆さんと問題意識を共有し、このような土地・家屋の発生を未然に防止するとともに、官民を含め関係団体が一体となって環境整備や地域情報提供のためのプラットホーム作りを進めることが不可欠です。