平成28年12月 新しい国づくりへ
昨年の2度延長した臨時国会では、最大の重要法案と位置づけたTPP協定・関連法案と年金改革法を、わが党は国会を再延長して成立させました。その他、多くの内閣提出法案も成立(成立率94.7%) し、大きな成果を収めることが出来ました。 29年度は600兆円経済の実現に向け、企業の「攻めの投資」や賃上げの促進などの経済の好循環を促す取組を更に進めてまいります。
新しい国づくりを目指して
一億総活躍社会
みんなが参加し躍動する日本へ。
子育てや介護の不安をなくし、女性や若者の活躍を応援します。
経済を成長させて、その成果を子育て・介護などの社会保障分野に分配し、それをさらに成長につなげる「成長と分配の好循環」をつくっていきます。誰もが、家庭で、地域で、職場で、それぞれの夢や希望をかなえられるように、より多様性に富んだ豊かで活力のある日本を目指します。
平成29年度予算では、一億総活躍社会の実現や経済再生を始めとした成長と分配の好循環の確立に向けた重要政策課題に重点化しました。
- 保育士等・介護職員の処遇改善
- 全ての保育士等を対象に2%増。さらにキャリアに応じて最大4万円増
介護・障がい福祉職員は、月平均1万円増 - 保育の受け皿拡大
- 待機児童解消加速化プランに沿って、50万人分の受け皿拡大を着実に実施
- 育児休業制度の期間延長
- 保育所に入れない等の場合、1歳6か月から最長2歳までに延長
- 給付型奨学金の創設
- 月3万円を軸に給付する「給付型奨学金」を平成29年度から一部先行実施
年金改革
年金制度のメリットをより多くの人に届けられるようにします。
- 将来年金を受け取るために必要な保険料の支払い期間を25年から10年へと大幅に短縮します。
- 大企業だけでなく中小企業などで働くパートタイマーの方も厚生年金と健康保険に加入できるようにします。
- 国民年金に入っている女性が出産する際は、前後併せて4か月間の保険料の納付を免除します。
世代間の支え合いで、今の若い世代が将来受け取る年金を確かなものにします。
若い世代が将来受け取る年金額を確保するため、景気が悪くなり、保険料を納めている若い世代の給料が下がるような場合、高齢者が受け取っている年金額も少し下げさせてもらいます。具体的には、物価の低下に比べ賃金の低下が大きい場合には、賃金の低下にあわせて年金額を改定するようにします。
ただ、これは万が一の不測の経済状況が起きた場合の備えです。ただちに、年金額をカットするわけではありません。賃金と物価が安定して上がる通常の経済状況では、年金額は下がりません。この新しい制度は5年後の平成33年から導入されますが、平成31年から、低所得・低年金の方への配慮として、月額最大5,000円(年6万円)の福祉的給付を実施していきます。
民進党の対応にメディアからも批判
「年金たたき」で再浮上を狙う民進党の姿は見苦しい。
「年金カット法案」と攻撃する姿が、実態の伴わない年金改革法案を掲げて2009年の政権を得た民主党の姿にかさなる。冷静な議論に立ち返ることを民進党に強く望む。民進党は「政府案では将来世代の給付も減る」と批判するが、これも違う。「年金たたき」で再浮上を狙う民進党の姿は見苦しい。
11月9日 毎日新聞朝刊12面「記者の目」
長期的視野を欠いた、的外れの主張である。
賃金の下落を年金額に適切に反映する仕組みは妥当である。疑問なのは民進党が「年金カット法案」と批判することだ。目先の年金額のみに注目し、長期的視野を欠いた、的外れの主張である。
11月6日 読売新聞朝刊3面「社説」
この法案は「将来の年金水準確保法案」です
年金は現役世帯に支えられている、「仕送り」の仕組みであり、世帯間の分かち合いです。過去に賃金が下がった際に、それに見合った年金額にしなかったため、現役世帯は賃金も下がり、将来受け取る年金も低くなるという“二重の苦しみ”ありました。そのため、世帯間の公平を確保し、将来世帯の基礎年金の水準を確保する観点から、賃金が名目でも実質でも低下する場合は、賃金の変化に合わせて年金額を改定(賃金スライド)するよう、見直しを行います。
安倍政権では賃金上昇を含む経済再生に全力で取り組みます。賃金と物価が上がっている状況では、年金額が下がることはありません。
年金は、50年、100年と非常に長く続く制度ですので、大きな経済の動きが万が一あったとしてもそれに対応出来る仕組みをあらかじめ整えます。年金制度の持続可能性も高まるのです。
外交
延べ100を超える国と地域を訪問し、首脳外交で世界をリード
安倍総理は、就任以来、地球儀を俯瞰する積極的な外交を展開してきました。しっかりと国際社会で日本の存在感を示し、自由・民主主義・基本的人権・法の支配といった基本的価値を共有する国との連携を深めてきました。
サミットの成功、そしてオバマ大統領の歴史的な広島訪問
伊勢志摩サミットでは、不透明な世界経済のリスクに立ち向かう意志をG7のリーダーたちと共有しました。そして、現職のアメリカ大統領として初めて、オバマ大統領による被爆地・広島への訪問が実現しました。年末には、安倍総理が真珠湾を訪問するなど、日米の絆は深まっています。
日露首脳会談で、平和条約締結に向けて確かな第一歩
従来の北方領土交渉では平行線が続くだけで解決には至らない。両首脳は「新しいアプローチ」で解決を目指すことに合意しました。日ソ共同宣言に記されている歯舞・色丹だけでなく、国後・択捉も含めた4島で「特別の枠組み」を作り、共同経済活動に向けた交渉を始めます。そして、元島民の方々が自由に往来できるようにしていきます。ひとつひとつ平和条約の締結に向けた環境作りを進めていきます。
TPP
アジア・太平洋地域で「自由で公正」な巨大市場の創出
中国や韓国といった国は、各国と二国間の貿易協定(FTA)を結ぶことで貿易を伸ばしてきています。これに対し、日本は、太平洋を取り囲む国々と連携して、世界のGDPの約4割、人口8億人を抱える「自由で公正」な巨大市場(TPP)を創り出し、貿易や投資を活性化させようとしています。GDP約14兆円(2.6%)のプラス効果があると見込まれています。日本経済が、人口減少社会を乗り越えて、中長期的に成長していくための基盤となります。
貿易や投資の新しいルール
TPPは、エリア内の関税の削減・撤廃だけでなく、サービスや投資の自由化も進めます。著作権や特許などの保護や投資について新しいルールを決めることは極めて重要です。TPP協定は、環太平洋の12か国が長い年月をかけて合意したものです。日本は主導的な役割を果たしていく立場で、国会の手続きを終え、自由貿易を大切にする姿勢を明確にアピールしました。
守るべき国益は守る。そして、新たに打って出る農林水産業を支援します。
各国の関税がほぼ100%自由化される中で、日本は、厳しい交渉の末、農林水産物の約2割を関税撤廃の例外にすることができました。それでもなお残る農家の方々の不安を受け止め、これまでに約6,000億円を超える予算を充てて、農林水産業の体質強化の支援を進めています。
食の安全はしっかりと守られます。
輸入食品の安全性についても心配はありません。TPP協定によって日本の食品表示等の制度が変更されることはありません。遺伝子組換え農産品についても、日本の法律の範囲内で対応すればよく、審査基準を緩めたり、遺伝子組換え農産品の輸入を認めることがTPP協定によって強制されているわけではありません。
IR推進法
特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律
そもそもIRって? なんで必要なの?
IRとは、ホテル、ショッピングモール、エンターテイメント施設、国際会議場などの観光施設とカジノが一体となっている「統合型リゾート施設」のことです。世界では既に127ヶ国にあります。高層ビルの屋上に船の形をした巨大プールがあることで有名なシンガポールの「マリーナベイサンズ」もIRです。
IRの利点は、カジノを含め施設全体を一体的に運営することにより採算性を確保できることです。日本には、まだまだホテルなどの観光施設が不足しています。施設全体としての収益で将来的な採算性が担保されれば、民間の大規模な投資も進み、各地の特色を生かした日本ならではの健全なエンターテイメント施設が整備されていきます。観光を通して地域経済も活性化されますし、国や地方自治体の財政への貢献も期待できます。
カジノが「どこでも」「誰にでも」解禁と思っていませんか?
それは間違いです。
日本のあちこちにカジノができるわけではありません。
地方自治体が議会の同意を得て手を挙げ、国が認めた国内の数か所の地域において、あくまでも統合型の観光施設(IR)の中に、極めて限られた面積のカジノを、厳格な適正審査の上にライセンスを付与した事業者のみに認めるものです。
ギャンブル依存症への対策などを整えた具体的な実施法案を作り、再び国会で審議されます。
今回の法律は、基本的な方針を示すための議員立法です。今回の法律でカジノが合法化されるわけではありません。今回の審議の中で提起された課題をクリアすることを前提に、政府が1年かけて具体的な実施法案を作って、再び国会で審議することになります。
厳しく定められた基本方針(抜粋)
- IR区域の数は厳格に少数にすること
- カジノ関係者の適格性審査に厳格な要件を設けること
- カジノに厳格な入場規制を導入し、反社会勢力を排除した清廉なカジノにすること
- ギャンブル依存症への対策を抜本的に強化すること
- 独立した強い権限を持つカジノ管理委員会を設置すること
- 納付金の使途は、社会福祉・文化芸術振興・依存症対策に充てること