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平成29年5月 カジノ法? IR実施法・開業に向けて!!


IR推進法について

特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」の略称です。

そもそもIRは、ホテル、ショッピングモール、劇場、水族館やテーマパークなどのエンターテイメント施設、国際会議場などの集客施設とカジノが一体となっている「統合型リゾート施設」のことです。そして「IR推進法」はIRの基本的方針を示した議員立法です。従ってこの推進法によってカジノが合法化され「どこでも」「誰にでも」解禁されるわけではありません。この点を正しく認識すれば、「文化・自然vsカジノ」と言うような不毛な二極論議は成立しないのがお解り頂けると思います。カジノ推進法ではないのです。

目的

一言で言えば「観光客による地域の活性化」(安倍総理大臣)です。

背景には、近年のわが国における世界遺産の増加や日本文化に興味を持つ外国人の増加による、訪日外国人観光客の増加が大きく関係しています。つまり、①観光の振興 ②地域経済の振興 ③財政の改善の3つが挙げられます。

経緯

国会には、私も所属する超党派による「国際観光産業振興議員連盟」(会長:細田博之・自由民主党総務会長)があり、平成28年(昨年)12月15日に『特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律』、通称「IR推進法」が成立しました。成立までには15年間の政官財、地方の調査研究、5年間に及ぶ超党派IR議員連盟の議論、各党内の議論があり、最初の法案提出から3年を要しました。

(昨年の法案成立時は、自由民主党、日本維新の会が賛成、民進党、日本共産党は反対、公明党は自主投票)

3月24日には、政府内にIR推進本部が設置され、今後は昨年成立したIR推進法(議員立法)の次の段階である「IR実施法」の国会提出を目指すことになります。

その後は「IR区域認定」(国)、「IR事業者選定」(地方自治体)「IR開業」となりますが、実際にIR区域を整備して設置することになると、大規模地域整備や施設の建設等で数年は要します。よって全面開業は、2020年東京オリンピック・パラリンピック以降になりそうです。

ここで大切なのは、「金銭的貧困をもたらす社会問題」として①アルコール②薬物③ギャンブルの三つの依存症がありますが、ギャンブル依存症対策のための法律がないと言うことです。そこでまず『ギャンブル等依存症対策基本法』を策定することが、「IR実施法」策定の前に求められます。自民党では法案を取りまとめ各党に呼びかけを行っています。

IRの利点

外国人観光客などの多い地域では、経済は活性化し、地域の売上も伸び、雇用も増加しています。IRの利点は、カジノを含め施設全体を一体的に運営することにより採算性が確保できる点にあります。

施設全体としての収益で将来的な採算性が担保されれば、民間の大規模な投資も進み各地の特色を活かした日本ならではの健全なエンターテイメント施設が整備されていきます。わが国にはパチンコ、競馬、競輪、競艇などのギャンブルが存在しますが、カジノはゲーム性が高く、またエンターテイメントの色合いが濃いのが特徴です。

世界に目を向けると127の国・地域にIRはありますが、最近では高層ビルの屋上に船の形をした巨大プールがあるシンガポールの『マリーナベイ・サンズ』が有名です。有名なカジノがある国には世界各国から観光客が訪れています。

IR(統合型リゾート)施設の導入効果は、観光客数のみならず「観光の稼ぐ力・観光消費」の育成、地域の経済振興、財政再建にあるのです。

IR実施の課題〜IR実施法案策定にあたっての基本方針

『ギャンブル等依存症対策基本法』(仮称)の制定

「IR実施法」の前提として、歴史上、古くから日本にある社会問題『ギャンブル依存症問題』をIRとは関係なく解決し、地域住民の理解と賛成を得て不安の解消をはからなくてはなりません。ギャンブル等依存症は、①本人・家族の日常生活・社会生活に支障を生じさせ②多重債務・貧困・虐待・自殺・犯罪等の重大な社会問題を引き起こしています。最近の調査では、実際にギャンブル等の依存が疑われる者の割合は、成人人口の2.7%と推計されており、世界でも高い部類に入ります。

国民の健全な生活の確保を図り、安心して暮らせる社会の実現のため、全党共通の課題であるこの問題を、超党派議員連盟の中(各党内議論を含む)では、カジノ先進国や関係省庁、有識者等からヒアリングをするなど、現在意見の取りまとめに動いています。「IR実施法」制定前に『ギャンブル等依存症問題』の対応があるのです。

『IR区域数』(国)

IRは地方自治体が議会の同意を得て手を挙げ、国が認めた国内の数か所に設置されます。現時点では約20の自治体が関心を示していますが、IR推進法の附帯決議では『区域数は厳格に少数に限り、上限数を法定する』としています。

更には国際的・全国的視点から観光及び地域経済振興の効果が十分に得られる規模が求められており、広範な用地確保も必要になってきます。

安倍総理は「2020年の訪日外国人数(観光客)4,000万人を目指していますが、IR施設はビジネスや会議だけでなく家族で楽しむことの出来る大規模な施設であり、カジノはあくまでもIR施設(統合型リゾート)の一部であり極めて限られた面積の施設なのです」と言っています。日本のあちこちにカジノが出来るわけではないのです。

マリーナベイ・サンズ
マリーナ湾再開発エリア2010 年6月オープン
リゾート・ワールド・セントーサ
セントーサ島北部に2010 年2月オープン
斬新なデザインはシンガポールの新しいアイコンとなった。世界最大級のカジノ、ホテル、ショッピングモール、レストラン、劇場、博物館などから構成されており、アジア最大級の国際会議場と国際展示場も併設されている。
(出典:サンズ社2013年年次報告より)
家族で楽しめる大型リゾート施設がコンセプトで、カジノ、東南アジア初のユニバーサル・スタジオ、6つのテーマ別ホテル、45 以上のショップ、60 以上のレストラン、MICE 施設、水族館やプールなど水を使ったアトラクション施設などから構成されている。
(出典:リゾート・ワールド・セントーサ資料より)
『IR事業者選定』(地方自治体)

IRを整備する民間事業者は、公募により選定されることになると思われます(推進法)。当然、選定基準の明確化や公開、公募要領や提案資料、背面調査報告書など、全ての選定過程の公開はもとより公聴会や説明会の実施などにより、出来るだけ透明性・公平性を確保しなければなりません。もちろんIR事業者自身の財務的健全性、資金調達能力の有無、法令遵守状況は公募にあたって一丁目一番地です。その上で事業計画、持続性ある開発指針、安全管理が求められます。大切です。

『カジノの運営、厳格な入場規制 等の安全確保』

基本は地域住民の理解と賛成を得ることが不可欠です。IR推進法ではカジノ施設の設置及び運営に関して、入場者が施設利用に伴い悪影響を受けることを防止するための必要措置を講じるよう政府に要求しています。

政府は国会における『ギャンブル等依存症対策基本法』(仮称)の制定と並行して、関係閣僚会議において依存症対策強化に向けた検討を進めています。

地方自治体は一般市民が懸念する犯罪の増加などのカジノ開設による悪影響を除去するために、公営競技等を対象とする地域の治療施設との連携によるギャンブル依存症対策や治安対策を国に先行して行うなどしていきます。いずれにしても一般市民の不安解消をはかることが求められています。

反社会勢力の排除問題、年齢区分の設定、ギャンブル依存症者の対応(申告問題を含む)、監視カメラや警備員常駐による防犯面からの安全対策など、まだまだ議論を進めているところですが、カジノには誰でも入場できるわけではありません。カジノ施設関係者に対する規制を行うため、IR実施法に、独立した強い権限を持つカジノ管理委員会を設置する規定を盛り込むことがIR推進法に定められていますし、カジノ関係者(スタッフ)の適格性審査は、厳格な要件を設定し、随時のスタッフ研修・教育を始め、訓練を受けた入場ゲート警備員による入場体制の構築も現実的には必要でしょう。

〔例〕

  • 入場者を限定(外国人や事前会員登録した自国民に限る等)する
  • ポーカーマシンやスロットマシンは設置しない
  • キャッシュレスで遊べる器械は一定の上限額を設定する
  • 隔離された休憩室の設置 等

カジノを含む様々な施設で構成されるIRは、実際には多くのノウハウを必要とすることから、日本の伝統、文化、芸術的資源を活かせる国内有力企業、各地域の有力企業、そして国際的に認知された海外のカジノ事業者がコンソーシアムを組んで(共同事業)運営するのも一つのやり方でしょう。

いずれにしても今後の「依存症対策」「IR実施法」の議論が待たれます。